清朝前期のチベット仏教政策
本書は,清朝前期(本書では主に清朝建国から最盛期とされる乾隆期までとする)における「扎薩克喇嘛(ジャサク=ラマ)制度」の成立・展開の様相を分析することによって,清朝がいかにしてチベット仏教的世界観を共有する諸勢力と対峙していったのか,その具体的な手段と達成の度合いを提示するものである。そしてその作業を通して,清朝という多様で巨大な政権について,ひとつの実像を描出することを試みる。
第一章では,入関前~順治年間に清朝が行った様々なチベット仏教政策を取り上げ,扎薩克喇嘛制度設置 に結びつく具体的な事象を分析し,扎薩克喇嘛制度の淵源と成立に至る経緯を解明する。第二章では,康煕年間における扎薩克喇嘛制度の展開と,当該時期の清朝が行った青海・チベットに対する施策に扎薩克喇嘛制度が果たした役割を解明する。第三章では,雍正年間の清朝によるチャンキャ三世招請と彼に対...
本書は,清朝前期(本書では主に清朝建国から最盛期とされる乾隆期までとする)における「扎薩克喇嘛(ジャサク=ラマ)制度」の成立・展開の様相を分析することによって,清朝がいかにしてチベット仏教的世界観を共有する諸勢力と対峙していったのか,その具体的な手段と達成の度合いを提示するものである。そしてその作業を通して,清朝という多様で巨大な政権について,ひとつの実像を描出することを試みる。
第一章では,入関前~順治年間に清朝が行った様々なチベット仏教政策を取り上げ,扎薩克喇嘛制度設置 に結びつく具体的な事象を分析し,扎薩克喇嘛制度の淵源と成立に至る経緯を解明する。第二章では,康煕年間における扎薩克喇嘛制度の展開と,当該時期の清朝が行った青海・チベットに対する施策に扎薩克喇嘛制度が果たした役割を解明する。第三章では,雍正年間の清朝によるチャンキャ三世招請と彼に対する処遇について,そうせしめた当時の情勢に鑑みながら詳細に検討し,その意義を考察していく。第四章では,乾隆年間に実施されたチベット仏教政策を検討することで,乾隆帝が整備した扎薩克喇嘛制度の実態とその意図を解明する。第五章では,チベット仏教世界が順次藩部として組み込まれたのちに,各地域における統治政策に扎薩克喇嘛制度がどのように運用されたかを分析し,清朝の藩部統治政策における扎薩克喇嘛制度の多様なあり方を論じる。