「おたく」の精神史
著者からのコメント
「おたく」なる語が「オタク」と片仮名に書き換えられるあたりから文部科学省や経 済産業省や、ナントカ財産の類がちょっとでもうっかりするとすり寄ってくる時代に なった。ぼくのところでさえメディアなんとか芸術祭という国がまんがやアニメを勝 手に「芸術」に仕立て上げようとするばかげた賞がもう何年も前から「ノミネートし ていいか」と打診の書類を送ってくるし(ゴミ箱行き)、そりゃ村上隆や宮崎アニメ は今や国家の誇りってことなんだろうが、しかし「オタク」が「おたく」であった時 代をチャラにすることに加担はしたくない。国家や産業界公認の「オタク」と、その 一方で見せしめ的な有罪判決が出ちまった「おたく」なエロまんがはやっぱり同じな んだよ、と、その初まりの時にいたぼくは断言できる。国家に公認され現代美術に持 ち上げられ「おたく」が「オタク」と書き...
著者からのコメント
「おたく」なる語が「オタク」と片仮名に書き換えられるあたりから文部科学省や経 済産業省や、ナントカ財産の類がちょっとでもうっかりするとすり寄ってくる時代に なった。ぼくのところでさえメディアなんとか芸術祭という国がまんがやアニメを勝 手に「芸術」に仕立て上げようとするばかげた賞がもう何年も前から「ノミネートし ていいか」と打診の書類を送ってくるし(ゴミ箱行き)、そりゃ村上隆や宮崎アニメ は今や国家の誇りってことなんだろうが、しかし「オタク」が「おたく」であった時 代をチャラにすることに加担はしたくない。国家や産業界公認の「オタク」と、その 一方で見せしめ的な有罪判決が出ちまった「おたく」なエロまんがはやっぱり同じな んだよ、と、その初まりの時にいたぼくは断言できる。国家に公認され現代美術に持 ち上げられ「おたく」が「オタク」と書き換えられて、それで何かが乗り越えられた とはさっぱりぼくは思わない。だから「オタク」が「おたく」であった時代を「オタ ク」にも「おたく」にも双方にきっちりと不快であるべく本書を書いた。新書にして は異例の400頁超だが、『諸君!』で連載が中断したままだった「ぼくと宮崎勤の ’80年代」を加筆改稿したものである。近頃、流行の80年代をノスタルジックに語る 類の書物として本書を刊行する程ぼくは親切では当然ない。できうることなら旧作 『アトムの命題』との併読を強く希望する。
大塚英志,1958年生,国际日本文化研究中心教授,漫画家、评论家、小说集,著有《物语消费论》《少女民俗学》等书。
译者:周以量,博士,首都师范大学文学院副教授,日本文化研究者、翻译者、比较文学研究者,译有《小津安二郎周游》《(日本人):括号里的日本人》等书。