中国南北朝寒門寒人研究
【はしがきより】(抜粋)
本書は、書下ろしの第十一章を除き、筆者がこれまでに発表してきた論考のうち主なるものを集めたものである。寒門寒人研究と題した第一編のみならず、全体のテーマは南北朝期における寒門寒人問題である。
六朝、特に南北朝社会には所謂門閥貴族によって否定的価値を意味する「寒」という語を冠せられるところの様々な新興勢力が存在した。彼らは門閥貴族に蔑視されながらも次第に政治的軍事的、さらには文化的力量を蓄え貴族層に対抗していった。その対抗・挑戦の歴史を考察することで、南朝社会がいかに次代の隋唐世界に影響したのかを問いかけようとするのが筆者の基本的姿勢である。なお筆者のいう寒門は、それなりの族的或いは地域的背景を有し文武の官僚組織に官として参与しうる存在とみなされながらも、貴族層によって彼らよりも卑しい身分とみなされる人々を指し、寒人は本来全く...
【はしがきより】(抜粋)
本書は、書下ろしの第十一章を除き、筆者がこれまでに発表してきた論考のうち主なるものを集めたものである。寒門寒人研究と題した第一編のみならず、全体のテーマは南北朝期における寒門寒人問題である。
六朝、特に南北朝社会には所謂門閥貴族によって否定的価値を意味する「寒」という語を冠せられるところの様々な新興勢力が存在した。彼らは門閥貴族に蔑視されながらも次第に政治的軍事的、さらには文化的力量を蓄え貴族層に対抗していった。その対抗・挑戦の歴史を考察することで、南朝社会がいかに次代の隋唐世界に影響したのかを問いかけようとするのが筆者の基本的姿勢である。なお筆者のいう寒門は、それなりの族的或いは地域的背景を有し文武の官僚組織に官として参与しうる存在とみなされながらも、貴族層によって彼らよりも卑しい身分とみなされる人々を指し、寒人は本来全く官には無縁な庶民出身者を想定している。