文獻と遺物の境界
<内容>
これまでの中国出土簡牘研究は、文字の釈読や語句の解釈に専念するあまり、簡牘(木簡・竹簡)の出土遺物としての側面を軽視してきた感がある。本書はこうした傾向に対する批判に立って、簡牘が文献と遺物の境界に位置する史料であるとの視点から、研究を新たなステージに引き上げようとする試みである。
具体的には、簡牘と出土遺構の関連性、文書の書き手と行政実務、作製から再利用・廃棄に至る簡牘のライフサイクル、墓中に副葬される簡牘の意味、および紙への移行の実態などの問題が、それぞれの史料に即して実証的に分析される。そこに見えてくるのは、多様な形態をもち、移動し、生成・消滅する動的な史料としての出土簡牘の姿であり、また担い手となる古代人の行動と人間関係である。この点において本書は、社会史的な関心にも十分に応える内容となっている。中国史研究者のみならず、日本木簡研究...
<内容>
これまでの中国出土簡牘研究は、文字の釈読や語句の解釈に専念するあまり、簡牘(木簡・竹簡)の出土遺物としての側面を軽視してきた感がある。本書はこうした傾向に対する批判に立って、簡牘が文献と遺物の境界に位置する史料であるとの視点から、研究を新たなステージに引き上げようとする試みである。
具体的には、簡牘と出土遺構の関連性、文書の書き手と行政実務、作製から再利用・廃棄に至る簡牘のライフサイクル、墓中に副葬される簡牘の意味、および紙への移行の実態などの問題が、それぞれの史料に即して実証的に分析される。そこに見えてくるのは、多様な形態をもち、移動し、生成・消滅する動的な史料としての出土簡牘の姿であり、また担い手となる古代人の行動と人間関係である。この点において本書は、社会史的な関心にも十分に応える内容となっている。中国史研究者のみならず、日本木簡研究や史料論に関心をもつ方々に、ぜひ一読をお願いしたい。(編者)